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一冊の本

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「日日是好日」
「にちにちこれこうじつ」と読みます。
茶席の床によく掛かっている言葉ですね。

25年間茶道を続けてきた筆者の「お茶」というものを15章にまとめ、お茶が教えてくれた15のしあわせとして書かれています。

おもしろかった!
日本の美しさ、お稽古するということ、ぶち当たる疑問、茶席でのコミカルなやり取り、そしてその中でのいろいろな気付き!同感!共感!の連続!
筆者森下さんのお茶の先生は「武田先生」。私のお茶の師と同じ名前!!なんだか懐かしく今は亡き先生を思い出しながら読みました。

まえがきに

 世の中には「すぐわかるもの」と、「すぐにはわからないもの」の2種類がある。
すぐわかるものは、一度通りすぎればそれでいい。けれどすぐにわからないものは(中略)何度か行ったり来たりするうちに、後になって少しずつじわじわとわかりだし、「別もの」に変わっていく。そしてわかるたびに、自分が見ていたものは全体のほんの断片にすぎなかったことに気がつく。「お茶」というものはそういうものだ。


という文がある。「お茶」というところをそれぞれ自分が取り組んでいるものに置き換えてみても文章は成り立つのでは?

どなたが読んでも共感する部分は多いんじゃないかな?

全部の章に共感したんですが、その中からもう1つ。

 「なぜでもいいから」 
「最後にお茶碗の底にひらがなの「ゆ」の字を書くのよ」
 「なんで?」
 「なんででもいいの。いちいち「なぜ?」と聞かれると、私も困るのよね。とにかく意味なんかわからなくてもいいから、そうするの」
妙な気がした。学校の先生たちは、
「今のは、いい質問だ。わからないことを鵜呑みにしてはいけない。わからなかったら、その都度、理解できるまで何度でも聞きなさい」と言ったもんだ。
(中略)
ところがここでは勝手がちがった。
「わけなんかどうでもいいから、とにかくこうするの。」
(中略)
「それがお茶なの。理由なんていいのよ、今は」


誤解の無いように付け加えますが、この場面は筆者がお稽古を始めて間もないときのエピソードです。本当は「理由」はあるのです。それは「すぐにはわからないもの」として大事に気付きなさい、ということのような気がします。


「そんなの意味ない」、「どうせこんなことやったって」、「そこまでしようと思ってないから」と単純な繰り返しの稽古やトレーニングを嫌ったりする言葉を耳にします。
「理由など関係なくこつこつと積み重ねたものだけが残る」「そこから見えてくる世界が段階を追ってある」んだな・・・この歳になって、自分の反省の上に立って実感として分かってきたんですが(^^;

「手本をしっかり学ぶこと!右に上がっていたら右に上がる!45度傾斜していたら45度!見えてるように書いて!理由なんていいから!そういうことも大事!」と今週の専門学校の授業で言い渡したら、いつもは何人かは喋ってるのですが、40人の生徒達、なんだか真剣にシーンと書いてました。 「理由なんていいから!」この言葉は自信を持って使うと理屈を述べて分からせるより納得させられる言葉かも知れません!!

簡単に読める本です。冬休みの一冊にオススメ!
by irohanihoheto_ku | 2008-12-10 11:50 | 日常